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NARUT0のカカイル創作ブログ。

バレエカカシ7(SS)

バレエダンサーカカシ×剣道大学生イルカのSS。続きます~只今折り返し地点!毎度のことですが、注意書きに問題なければ以下の折り畳みの本文をどうぞ。
*現代パロ(バレエダンサーカカシ×剣道大学生イルカ)
*設定がシリアスというか、割と暗い。
*最後はハピエンに持ってきます。

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バレエカカシ7 Voix tremblante(声を震わせて)

 

日本に着いてから約4ヶ月。

都内にある木ノ葉学園小等部でのバレエ講師としての仕事も軌道に乗って、初めての日本滞在にしては順調だと言える。
小等部で教鞭を取る紅やガイなどの支えもあるけれど、バレエレッスンを担当するアンコという教師は紅や学園長の綱手と同類のさっぱりとした性格の女傑で、カカシの仕事ぶりに一々口を出すタイプではなかった。

そもそも彼女はカカシとの顔合わせの場で、饅頭片手に開口一番「ガイジンの先生が来るって言うからどんなのが来んのかと思ったら、やっぱ優男タイプかいっ」と言い放ち、続けて「あたしのタイプじゃないから安心しなよ」と言ってのけた。それから間もなくカカシは彼女の交際相手についての噂を耳にすることとなる。


子供たちにも有名なカップルらしく、お喋りの大好きなバレエ部の女の子達は、自慢のアンコ先生についてカカシに報告を繰り返した。

「イビキ先生はね、アンコ先生の彼氏なんだよ、イカツイけど」と金髪をバレエ用にお団子頭にまとめたイノが言い、「イビキ先生すごく優しいの、剣道部の顧問なのに滅多に怒らないんだって。笑っても顔は怖いんだってナルトが言ってたわ」と名前の通りの髪を揺らしてサクラが言い、「ヤクザみたいな顔だけど、家庭科の料理はイビキ先生が一番上手なんだから」とキレイなお団子2つのテンテンが言い、「…いつもアンコ先生が食べてるお菓子はイビキ先生の手作りです…」と小さな声でヒナタが付け足した。

酷い言われようにどんな強面かと思っていたら、バレエ部の終わる時間に四駆を乗り回して、アンコを迎えに来る馬鹿デカイ男を見て納得した。

「今年は派手に行くよ!!」
「…何のこと」
「あんたね、人の話は耳かっぽじって良く聞きなさいよ!!夏って言ったら毎年恒例の発表会じゃない!!」
「……」

何も言わずとも一人で納得して次第に大きさを増すアンコの声に、「知らない」と言えば火に油を注ぐようなもの。以前、「甘い物食べ過ぎじゃない」と純粋にバレエダンサーとしての疑問をぶつけたところ、瞬殺でボディーブローを喰らい「ひょろひょろのクソが生言ってんじゃないよ!!」と口汚く罵られた挙句、悶絶しているところにトドメの蹴りまでお見舞いされたカカシだ。

 

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「8月の終わりにここのバレエの発表会があるんだって。イルカさん見に来る?」
実はイルカがボランティアをしている剣道部の子供から、すでに話は聞いていた発表会。通常は多額の月謝を払わないとレッスンを受けられない高嶺の花のバレエを、学園の支援のもと習えるとあって女子には大層人気があるらしい。バレエ部の顧問と仲の良いイビキ先生が率いる剣道部では、その女子の園についてしばしば話題に上がる。

「へへ~イルカ先生、オレってばバレエ部に気になる女の子がいるんだってばよ」と言うのはやんちゃ坊主のナルト。「サクラちゃんヒデーんだ、発表会のことサスケには言ってオレには来んなって言うんだってばよ。でもヒナタが来て欲しいって言ってっから、しょうがなく行くんだってばよ」

「へぇーモテるんだな」と冷やかしてやったら「サクラちゃんも好きだけど、ヒナタも嫌いじゃないってばよ」と生意気な顔をして調子に乗っていた。

そんな話をしていると、どうやら剣道部の他のメンバーも見に行くという。バレエ部に入った男性顧問ということで当初はカカシさんを警戒していたイビキ先生から「アイツも今回は舞台に上がるらしいぞ」という話を聞いて、イルカ自身も気になっていた。

「俺が見に行っても良いんですかね?」
「大丈夫だと思うよ。生徒の家族の他に友達とか、剣道の子もいっぱい来るって言ってたし、イビキってのも見に来るんだって。」
「カカシさん、他の人も呼んだんですか?」
「ううん、友達なのイルカさんしかいないもん、俺」

家にカカシさんを呼んで飯を一緒に喰うようになってから1カ月以上経った。時たま気分転換に外食することもあるが、独り者同士あまり遠慮なく誘い合って、気が付けば週の半分以上を一緒に過ごしている。だからこそ、自分ほど仲の良い友達がカカシにはいない、また逆もしかりだとお互いに気付いている。

出会った当初はどこか近寄りがたい空気を身に纏っていたカカシさんは、最近だいぶ変わってきた。変わったとはいってもイルカに対するスキンシップや甘えたな態度のみで、小等部で付き合いのあるというガイ先生や紅先生への態度はビックリする程そっけない。

彼らへの返事は「うん」とか「ああ」とか「別に」とか「普通」とか。
先日一緒に帰り道を歩いていて、偶然出会ったガイ先生を紹介された時もそうだった。

「よーう!カカシ!最近見かけなくてうちのクラスの女子が寂しがってるぞー!」
「ふーん」
「なんだ!なんだ!元気にしてるのかー!パワーが足りんぞ☆パワーが☆」
「普通」
「おい!そこの君!なんだ君はぁ!さてはカカシの友達か!青春だな☆さすが俺のライヴァーーール!!」
「別に。あ、イルカさんこれガイね」
「は、初めまして、よろしくお願いします」
「なかなかの好青年じゃないか!!まぁ俺には負けるがな☆噂の男前教師マイト・ガイ!!ピチピチの26歳だ!!惚れたら火傷するゾ☆」
「惚れるとか自殺もんでしょ」
「ナハハハハハハ!!死んでしまうほど魅力的ということダナ!!俺はどうもナウすぎていかんな☆ハハっハハハハハ!!!」
「あっそ、じゃ俺たち帰るから」
「さらばだ!我がライヴァル!!また会おーーう!!!」
かみ合ってるんだか微妙な会話を無理やり終わらせたカカシさんは、俺の肩に手をかけて帰り道を急いだが、背後では「青春だな!!!ナウいぞ!!!」という声がこだましていた。

 

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「最近元気そうじゃない」
「普通だよ」
「あら照れることないじゃない、ロンドンで会った時は死にそうな顔してる印象しかなかったもの。そんな仕事して鏡ばっかり見てるんだから自覚あるでしょ」
「まぁそうだけど」
「大学生の子と仲良いんでしょ?ここの生活は良い気分転換になってるみたいね」
そんな会話を紅と交わした。

日本に来る前に一度会ったことのある紅は恋人のアスマから色々と話を聞かされていることもあって誤魔化しが効かないが、イルカさんのことを「仲が良い」「友達」、ましてや「気分転換」と言われても、なにか釈然としないものがある。

学園の職員同士ガイや紅と別に仲が悪いわけでは無いが、かと言って学園外で食事を共にするほど仲は良くない。
毎日をバレエの稽古と舞台の往復で単調に暮らしていたころに比べて、日々が充実しているというのは正しいと思う。当初は「ガキの世話か」という先入観のあった講師としての仕事も、多少騒がしいが純粋にバレエを楽しんでいる素直な子供たちと接するのは悪くないと今は思える。そして私生活において多くの時間を過ごしているイルカさんの存在も大きいのだと自覚があるが、それは果たして「仲が良い」程度のものだろうか。

初めてイルカさんの部屋で食事をした日、一緒に料理を作り、外食している時も寛いで見えるイルカさんを目にした時の言い表しがたい気持ち。もっと笑う顔が見たいと思い、寂しげな表情にはカカシ自身の胸が痛み、照れ隠しの妙な顔は可愛いとすら思った。

照れたり恥ずかしがりながら目を伏せながら鼻の傷を掻くイルカさんをもっと近くで感じたくなった衝動で抱きしめたいと言ったが、次の瞬間急に断られるのが怖くなって、戸惑う彼に構わず腕の中に閉じ込めた。彼を逃がすまいと自然と力が入ってしまったが、小さく息を吐くイルカさんの緊張した顔がまた可愛いと思うのはどこか変なのか。その後すぐ彼は立ち上がったが、顔を赤くしてまた一緒に食事をすることを約束してくれた。


1回抱きしめるとより近くにいたいと、欲望が強くなるのに時間はかからなかった。イルカさんの家で食事をご馳走になる時は2人で買い物に行き、2人で台所に立って作ったものを彼の家の小さなテーブルの上に並べて一緒に食べる。

暑い日には箸と格闘しながらそうめんを口に運び、産まれて初めて生のイカを刺身で食べ、ヒジキという黒い物体を海藻だと言うイルカさんを疑った。肉売り場でイルカさんに内緒で買った松坂牛という肉をイルカさんに怒られながら2人でジュージューと焼いて、あまりの旨さに顔を見合って驚いたこともある。

料理をする時はいつも幸せそうな顔をするイルカさんの額に掛かる髪を撫でたり、餃子やハンバーグなど彼が簡単だと言う料理を、手を取って習う時間が楽しいと思う。彼の色んな表情を見るのが酷く楽しいのに、この気持ちを何と称すればいいのか分からない。

 

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最近はカカシさんのことばかりを考えている気がする。
家飯を食うようになってから、無意識なのか俺の頭を撫でたり髪に指を絡めて遊んできたりするカカシさんは、食事の後に座ってくつろぐ時、距離が妙に近い。こっちは恥ずかしかったり嬉しかったりと一喜一憂しているのに、ニコニコ微笑むだけのカカシさんは「イルカさん可愛い」とか赤面させるようなことばっかり言う。カカシさんの隣が居心地良くて好きで、急にドキドキし出した。幸せな気持ちに包まれて、もっともっとと欲張りになっては近すぎる熱に怖くなる。

もしかしてこの「好き」って友情じゃなくて恋愛の気持ちなのかも知れない。考え始めたら急に意識が開けた「好き」って気持ちが溢れそうで震えが来た。
女々しさと、男なのに男が好きだなんて発想に気持ち悪くなって、少しカカシさんと距離を置いたりした。

甘えてくるカカシさんが俺のこと好きなのかもって期待と、外国人のスキンシップ過剰疑惑の考え違いだと言う不安で、酷く不安定になってる。
「前期試験で忙しい」なんて、言った瞬間に後悔した俺のヘタな言い訳に「頑張ってね」と笑顔で言ってくれたカカシさん。寂しくて、1人で何をしてるのか、ちゃんと食事しているか気になって授業中すら上の空だ。

結局、理不尽な寂しさでいっぱいになって6日しか持たなかった。相変わらずニコニコと甘えてくるカカシさんが可愛くて、我慢してた分、頭が沸騰しそうな嬉しさでニヤニヤが止まらない。自分でもだいぶ気色悪いと思うんだけど。

 

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「好きです、俺カカシさんのこと、好きです」

俺の家で一緒にご飯を食べるときは、家とカカシさんの所の大体真ん中にあるクラマ公園まで一緒に歩く。公園の白い電燈の下で「暑いねぇ」なんて言って途中のコンビニで買ったガリガリ君をパクつくカカシさんを見てたら漏れてしまった、本音。

「?」
「……」
「…俺もイルカさん好きだよ?」
「え、っと、友達みたいな好きじゃなくて恋愛っていうか何て言うか。で、でも別にどうなりたいとかじゃないんですけど」
自分でも声が震えてるのが分かるくらいだから、カカシさんにもきっとバレてる。緊張して頭は真っ白で手汗が気持ち悪い。
「?ねえ、なんで?」
「いつも一緒にいるから、カカシさんの存在が大きくて、好きになり過ぎてて。最近はキモいぐらい胸がいっぱいなんです」
「俺イルカさんのこと好きだけど、愛とか良く分からない」
「え?」
「今までね、人を好きだって思ったことないし、今までは人に対しても何に対しても真剣になれなくて、惰性で生きて来たから」
「そんなことないっ、バレエをする時のカカシさんは真剣な顔してるっ」
「バレエこそだよ、愛とか恋とか、真剣とか言いながらね。分からないままやってきたんだ」


一人で勘違いをして突っ走った挙句がこの結果か。

目の前が真っ暗で、どうにか絞り出すように「そうなんですね」とか何とか返事をした。カカシさんが何か言ってるようだけど全く聞こえないしもう訳分からないから、酷く適当な作りになった頭からは「うん」とか「はい」しか出ない。とにかく1人になりたい、消えたい。「おやすみなさい」と言い残して家までの暗い道をひたすら走った。明日から、いや今すぐカカシさんのことは忘れよう、彼の前から姿を消そうと誓って。

 

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あーイルカさんが気の毒で書くのが辛いっす。幸せにせねば!!途中でガリガリ君を出しましたが、シブのカカイル祭で、ちょうどガリガリ君のパロを描きました。いつも通りどうしようもないギャグで、自分でもこの振り幅はどうかと思います、うーん。

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