Papersong Bubbles

NARUT0のカカイル創作ブログ。

バレエカカシ6(SS)

バレエダンサーカカシ×剣道大学生イルカのSS。続きます~。終わり見えない(´・ω・`)
毎度のことですが、注意書きに問題なければ以下の折り畳みの本文をどうぞ。
*現代パロ(バレエダンサーカカシ×剣道大学生イルカ)
*設定がシリアスというか、割と暗い。
*最後はハピエンに持ってきますが、現段階はぼのぼのです。今回ちょっとラブー♥

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バレエカカシ6 (chantant et doux やさしく歌うように)

 

「牛乳もコンビニで買ってたんですか?!」

カカシさんと飯を一緒に食べるようになって1ヶ月半、俺は意を決して初めて家飯に誘ってみた。外人だからかは謎だけどカカシさんは外食をする時はいつもエスコート役に回りたがる。

メニューは良く分からないくせに俺が手洗いに立っている間に会計を済ませることが何度もあった。「友達に奢られるのは、、、」と遠慮すると「俺のが年上だし」「無理言って付き合ってもらってるから」「イルカさんは日本のことを教えてくれる先生なの」と色々な理由を付けて来る。
先週の金曜日、トイレだと言って席を立ちカカシさんの前に会計を済ませたら、クレジットカードを手に準備万端だったカカシさんはその帰り道、随分と凹んでるようだった。
そんな顔をさせたい訳じゃないのに。

 

甘いものは苦手ってことだけどそれ以外は余り好き嫌いが無いカカシさん。一回蕎麦屋に連れて行った時に、天ぷらがダメだったな、そういえば。なんでもイギリスで有名らしいfish&chipsが苦手で「揚げただけってメニューは敵なの」と老人のような事を渋い顔してボソボソと呟いてた。

普段は簡単な料理を作っては侘しく一人で食べることばかりで外食なんてしない。あまり奢られるのも変だしもっと気安い仲だったら良いのに。モヤモヤした週末を過ごした挙句、カカシさんを誘ってドキドキしたままスーパーに立ち寄った。

「やっぱり国も変わるとスーパーもだいぶ違うね」
「え?そうなんですか」
「うん、日本はなんでも綺麗に並んでるし、魚がいっぱいあって楽しいよ」
「へぇ~俺がもし外国に行ったらやっぱり楽しいのかな」
「ふふ、ねぇイルカさん、今日は何買うの?マイタケ?」
「キノコ食いたいから舞茸かしめじでも買って野菜炒めにしようと思ったんですけど、鮭が安いからエノキとホイル焼きにします。家にネギあるし、ナスとネギで味噌汁作って」
「楽しみだなぁ、ねぇエノキって何?これ?」
「エノキって英語で何だろ?なんとかマッシュルーム?」
「分かんない、マッシュルームなんて白いのと茶色しかないよ。こんな変なの見たことない」
「変って…もしかして日本のキノコなのかな?」
「これは?あっこれも変なの」

キノコ売り場で舞茸やらしめじを手にとってはしげしげと眺めているのがちょっと可愛い。他にもリンゴやスイカが大きいとかナスが小さくて細いとか言ってはチョンチョン指でつついたりして子供みたいだ。こんなにスーパーで盛り上がるなんて予想外なんだけど。
「って、カカシさん今までどこで買い物してたんですか?」
「ん?近くのコンビニ」
「まさかコンビニだけで生活してたなんてこと…」
カカシさんの住んでいる学園の職員宿舎は静かな住宅街にあって学園からは近いけど、近くにコンビニが1軒ポツンとある程度で閑散としてる。

 

「あそこ近いし、何でもあるし便利だよね」
ニコニコ顔のカカシさん。聞いたらなんと牛乳からパン、その他にもトイレットペーパーなんか日用品までコンビニで済ませてると発覚した。薄々お金に余裕があるのは分かってたとはいえ、無駄遣いすぎて本当にビビるんけど。牛乳の棚に連れて行って、コンビニ価格の半額だと力説したら「凄いねぇ」なんてのんびりした答えが。
「イルカさんはいつもこのスーパーに来るの?」
「食品は大抵ここで、ティッシュとかは駅前のマツキヨも使います。コンビニは便利だけどちょっと高くって」
「そうだねぇ。ねぇイルカさんが買い物をするとき俺も一緒に来てもいい?」
鼻歌でも歌いそうな顔をニコニコさせて聞いてくるカカシさんはやっぱり可愛く思えて、変にまごつくのが自分でも恥ずかしい。

 

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「狭いし、汚いところですけど」
そう言いながら買い物袋をぶら下げた反対側の手だけでドアの鍵を開けたイルカさんの部屋にお邪魔した。建物自体は古そうだけど、男の部屋なんて皆こんなもんだと思う。ベッドルーム兼居間らしい部屋の真ん中にあるテーブルの上や床に重ねられた本があるものの、キッチンなどは綺麗なもんだと感心してしまう。
「お茶でも飲みます?」
野菜だの牛乳だのの詰まった買い物袋を片づけていると思っていたイルカさんは、いつの間にかムギ茶のボトルとグラスを持って部屋に入ってきた。
「もう夏なんじゃないかってぐらい蒸し暑いですよね。これでも飲んでください」
「あ、ありがと」
「カカシさんは日本の夏はじめてでしょ?今年はそんなに猛暑じゃないと良いんだけど」
「これよりもっと暑いの?」
「もうすぐ梅雨になって雨で涼しくなったりしますけど、本当の夏はこんなもんじゃないですよ。最近は35度以上なんてザラですからね」
「そりゃキツいねぇ」

 

イルカさんの隣にいると自然と寛いでしまうが、彼の家は部屋のそこかしこに彼の雰囲気が漂っているというか更に落ち着く。思い返せばロシアでもイギリスでもこんな風に訪ねられる友達はいなかった。恋人とは呼べない体を重ねるだけの女達はもっと即物的で、イルカさんのように隣に座って話をすることもなかった。女と比べるのもどうかと思うが、何故この青年がこれほど心にすっぽり収まるのか自分でも不思議に思う。
「それ、イルカさんのお父さんとお母さん?」
両親を13の時に亡くしたと聞いていたけど、部屋の隅にある棚の上には大きな写真盾がある。少し寂しそうに頷いたイルカさんは写真盾の中に入れられた沢山の写真について話してくれた。

若い夫婦の写真は結婚前の両親。ウェディングドレスで微笑む母親。会社の仲間とスーツ姿で肩を組む父親。お風呂に入る赤ん坊のイルカさんと父親。口の周りを汚しながらご飯を食べる赤ん坊のイルカさんと母親。両親の間に立ってはしゃぐ姿は3歳の時に初めて行ったディズニーランド。七五三で真面目な顔をした家族。小学校に入学して桜の木の前で撮った母親との写真。

「この写真は両親が亡くなる前に家族で行った旅行の時です。俺、小学校を卒業して少し反抗気味で親と旅行に行くのが気恥ずかしかったんです。うちの両親は仲が良くて手を繋いだり、休みの日は家族皆で出かけたり、そういう家族って周りにはあんまりいなかったから…」
「……」
「中学に入ったら部活が忙しいだろうからその前にどっか遠くに行こうって、父ちゃんが言い出して春休みに行った旅行でした。」
「良かったね、素敵な両親で」
「え?」
「写真、全部さ幸せそうに笑ってるもの」

普段のイルカさんだって笑ってることは多いと思う。でもこの写真みたいに全力で笑ってるっていうより何処か寂しさの残る微笑みとでも言う感じがして切ない。歳のせいも多少あるだろうけれど、多分イルカさんは本来こんな無邪気に笑う人なんじゃないか。

いつもだって顔を赤くしながら照れてる姿も微笑む黒い目も可愛いと思うけど、もっともっと幸せいっぱいに笑ったらいいのに。

 

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カカシさんと一緒にいて心臓がキュっとなるような瞬間を何度も味わって来たけど、最近はカカシさんからの言葉にドキドキしたりそわそわしたりと、自分の心がままならない。

両親の話をして湿っぽくなってしまったのを無理やり切り上げて、1人でキッチン逃げ込んだ。訳の分からないまま流れてしまった涙を乱暴に拭いながら、買ってきた材料を並べると、カカシさんが料理を見たいと横に立って微笑んでいた。
「このシャケ美味しいねぇ、ほんと美味しい」
「はは、良かったです」
「塩と胡椒と、最後に醤油ちょとかけただけでしょ?」
うぅ、そう言われると大雑把な調理方法で恥ずかしい。カカシさんは「美味しい美味しい」を連発しながら鮭と、味噌汁、焼いただけの厚揚げとたくあんと白米を口に運んでる。スーパーで突いていたエノキや厚揚げも食感が面白いと言い、特にナスの味噌汁は気に入ったみたいで、「ナスも味噌汁も食べたことあるけど、組み合わせるとこんなにおいしいんだねぇ」とご満悦なのでおかわりをよそってあげた。

夕食を片づけてからは、テーブルに戻って2人でアルコールを飲みながらのんびりとTVを見た。初めてだったけどカカシさんが寛いでくれて本当に良かったと思う。スーパーで見た子供みたいな姿は微笑ましくて、外でご飯を食べるときよりも「美味しい」と言いながら綺麗な指で箸を動かしていた。
「ねぇ、イルカさん」
「ん?なんですか?」
「抱きしめたいんだけど良い?」
「え、え?えぇ!?」
「嫌って言わないで」

頭が働かないまま反応できないでいると横からギュッと抱き着かれた。動けずに視線だけ横にずらすと綺麗な銀色の睫毛が伏せられた目が見える。緊張と驚きで「ハッハッ」と小さく息をしてると、さらにギュッと力が込められた。頭が沸騰しそうで無理やり立ち上がると、ビックリした顔のまま見上げて来たカカシさんと目があった。
「も、もうこんな時間っ、お、遅くなっちゃうんで途中まで送りますね」
抱き着かれた時に方に回された腕が太もものあたりにあるのを見て、立ち上がらせようとカカシさんの手を取るとカカシさんが小さく笑った。
「ねぇ、またイルカさんのご飯食べに来てもいい?」
「ま、また、はい、またご飯食べましょう」

外に出てカカシさんの家の方へ歩くこと10分、少し大きな通りに出ると「あとは道分かるから」と言ってカカシさんは帰って行った。自分の部屋に戻ると電気がつけっぱなしで、1枚だけのいつもとは違って2枚並ぶ彼が座っていた座布団を見た瞬間、2人でいた雰囲気、抱き着かれた時の感覚が背筋に走った。1人で馬鹿みたいに顔が熱い。
思わず目をつむってベッドに入ると、6月だというのに分厚い布団にくるまった。

 

両親を亡くしてすぐは塞ぎ込んでいたものの、時間の経過とともにそれも落ち着いてきた。小さい頃はいつも騒がしく遊び駆け回っていたけど、中学高校でだいぶ変わったって自覚がある。クラスのみんなと仲良く話もできるし、授業でペアを作るのだって問題ない。だた、親友と呼べるような友達のいない、学校の先生にも引き取ってくれた親戚にも「手のかからない子」という扱いをされてきた、喜怒哀楽の無い優等生。

大事な人を失う恐怖が自分の心を人に見せる前のブレーキだったのに、カカシさんを前にすると照れ臭さや切なさ、嬉しさ、色んなものがあふれてしまう。
カカシさんが何気なく言うその一言で、頬が熱くなってしまう。まっすぐこっちを見てる視線と合うと綺麗な目を細めて笑う姿で、涙がこぼれそうになってしまう。
あんな風に抱きしめられたら、もう。これ以上おかしくさせないで。これ以上好きになったらおかしくなってしまうから。


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ちょっとラブになったかしら。ふー、このシリーズは2人とも奥手というか、じれったく「ウガー」ってなるんだけど、そういうカカイルでもどんと焼きって奇特な方はいるかしら(遠い目)
今回の6話目を書く前にやっとプロットを起こしました。超イ・マ・サ・ラwwwしかも1話2行という粗雑構成wwwたぶん今回が折り返し地点で、あと4・5回ぐらい続きます。まとまれば4回なんだけどね。