Papersong Bubbles

NARUT0のカカイル創作ブログ。

バレエカカシ5(SS)

バレエダンサーカカシ×剣道大学生イルカのSS。続きます~。終わり見えない(´・ω・`)
毎度のことですが、注意書きに問題なければ以下の折り畳みの本文をどうぞ。
*現代パロ(バレエダンサーカカシ×剣道大学生イルカ)
*設定がシリアスというか、割と暗い。
*最後はハピエンに持ってきますが、現段階はぼのぼのです。

 

「イルカさん、ご飯食べたい」
「なに食べますか?洋食が良いですか?それとも和食?」
「和食。お魚がイイ」
「じゃあ大戸屋でも行きますか」
「オオトヤに焼いた魚ある?サシミじゃない奴」
「ホッケ定食があったんじゃないかな」
「ホッケ…ホッケ…」
「大きい魚ですよ。脂が乗ってて美味しいです」
「じゃ、それにしよ」


**************************

 

カカシさんと知り合ってからというものの、この奇妙な関係が続いてる。
出会いは俺がいつも剣道の稽古をしている体育館で、そこでバレエを踊っていたのがカカシさん。こうやって喋ったり歩いたり普通に過ごしてる時も格好良いけど、バレエを踊ってるカカシさんは何て言うのか、人間じゃないみたいに綺麗だった。西洋の独特の容姿のせいもあるかもしれないけど、天使とか神様とかそういうのってこんな感じなんじゃないかと思ったくらい。
思わず声を漏らした俺に話しかけてくれたカカシさんは、握手で挨拶を交わした後に、「グキュ」と小さくお腹を鳴らした。格好良い見かけと裏腹に赤くなった顔がなんとなく可愛く見えて、まごつく彼を近くの喫茶店に連れて行った。


駅前まで出れば流石にスターバックスとか外国な感じのカフェもあるけど、「グランデ」とか「トール」とか、訳の分からん注文方法が好きじゃない俺が選んだのは、街の小さな喫茶店。商店街の路地を少し入るけど、店主のおじさんが優しくて、お客が店の棚に並ぶコレクションの中からカップを選んでコーヒーが飲めるのが特別な感じ。そういえば、奥さんが作ってるサンドイッチも美味しいや。
カカシさんの好き嫌いが無いか確認してから、BLTとエビサンドをコーヒーと一緒に頼んだ。


「海野くん、こちらの方は初めてですね。英語の方がいいのかな」
「あ、日本語も大丈夫みたいですよ、たぶん」
「ふふ、まぁ今日は海野くんがカップを選んでエスコートしてあげてください」
「エスコート?そんな大層なこと出来ないですよ」
「似合うカップを選んで差し上げればいいんです」
「じゃ…、上の棚の白い、あ花のヤツじゃなくて、その3個隣の真っ白の、そう、それで」

頻繁に来る訳じゃないけど、時々立ち寄るこのお店で俺がいつも使っているのは海のような色合いのマグカップだ。なんでも近くで陶芸教室を開いてる先生の作品だそうで、下が深海のような濃い紺色で、上に向かって淡い青へのグラデーションになってる。ところどころ混ざってる白い波のような模様も綺麗だと思う。
カカシさんに選んだマグは一見真っ白なんだけど、カップの内部に白金の細かい模様が入ってて、これで紅茶を入れると飲み終わる頃に模様が見えてくる。
あ、紅茶の方が良かったのか?外国人ってコーヒーのイメージがあるんだけど何人かもよく分からない。

「コーヒー頼んじゃったんですけど、紅茶の方が好きでしたか?」
「いや、どっちも好きだから大丈夫」

奥さんが運んで来てくれたコーヒーをすすりながらポツポツと話を始めて、初対面の定番?年齢から地元や住んでいる所、趣味とか、カカシさんの質問に答えるままに話した。普通の大学生の取り立てて面白くもない自己紹介で微妙な気分になる。

慌ててカカシさんに話を振ったら、「ロシア人でイギリスに住んでてバレエをしてた」らしい。自分の世界とはかけ離れてる気がして「へぇ」とか「はぁ」なんて雑な相づちを打ってたら、「今はプロでもないし、そんなに偉いものじゃないんだけど」と変な顔をしたカカシさんは、やっぱり少し可愛く見えた。
「男でも可愛いって変かな?でも美人っているんだなぁ」なんて思いながら、イギリスやバレエのことを聞いていたらサンドイッチが運ばれてきた。イイ匂い。


カカシさんの好みは分からないから、とりあえず頼んだベーコンレタストマトのBLTは定番だけど、エビサンドがこの店の隠れた逸品ってことで、お互いの皿から1個ずつ交換した。
レモンと胡椒の味がするクリームチーズを間にエビと小さい菜っ葉みたいのがトーストされたパンにぎっしり挟まってる。上手く食べないとエビが落ちそうだけど、
口をつけると休憩するのも惜しいくらいムシャムシャ食べて、チラっと顔を上げるとカカシさんもムシャムシャ食べてて、もう付け合わせのサラダも終わりそう。

「俺、ごはん食べる所とか知らないし、またイルカさんと一緒に食べたいです」
「お、俺で良かったら、えっと…はい」
「嫌?」
「嫌じゃないですよ。でも俺なんて冴えないヤツじゃなくても」
「ダメです、イルカさんじゃないと」
なんでそんな風に言うんだよ。もしTVに出てる綺麗な芸能人を目の前にしたらこんな照れるような化かされてるような気分になるのかな。
鼻の奥がキンってなって思わず目を瞑った。


**************************


体育館で見かける剣道のひと、イルカさん。最初に挨拶を交わした時は腹の音が鳴るなんて失態をおかしたが、微笑んだだけでカフェに連れて行ってくれた優しい彼。男だというのに、真剣な顔を綺麗だと思えば、照れる仕草を面白いと可愛いと思ったり、イルカさんを目の前にすると、どうにも不思議な気持ちになる。男女問わず他人にこんな思いを持ったことはない気がする。

イギリスにいた頃に異性の付き合いがなかった訳じゃない。恋愛ものが大半を占めるバレエの「芸の肥やし」と、女性団員からアプローチを掛けられるがままにベッドを共にすることもあった。

幼い頃は父と2人だけ。一番身近であるはずの母のいない世界で生きてきて、女性というものにそれほど幻想を抱いてこなかった気がする。周りの連中は、仕事と恋愛が世界の中心のようだった。若い頃なんて特に、恋愛というよりセックスへの興味が勝ってギラギラしている連中を横目で見ては、自分と何かが違うように思った。

自分の世界の中心だった父と離れてイギリスに来た当初、そんな周囲の少年たちと違うのかと疎外感に焦って初めてベッドを共にした女の顔なんて、もはや覚えていない。
カーテンから漏れるオレンジ色の街灯を背に受けながら、「愛してる」と言って自分の性器の上にまたがる女の黒い影を見て思う「ああ、こんなものか」という程度の経験に終わった。
バレエや、レッスンで教わるクラシックやオペラなどの古典芸術、街の至る所にある十字の教会、あらゆる場所で唱えられる崇高なる愛なんてものは、こんなものか、と。


「バレエのドン・キホーテはバジルとキトリ愛の物語です」バレエ題目の概要を習うたびに出てくる「愛」という言葉。
聞くたびに「主人公は性交をしたのか。愛なんて性交のために家出したり殺人を犯したり人道を踏み誤るのか」という疑問が頭に浮かぶ頃もあった。
歳を重ねるにしたがって愛と性交は違うらしいと漠然と悟ったものの、性器を埋め込む女に何の情も湧かない自分はきっと一生愛のかけらも理解できないに違いない。

猥談に賑わう少年たちだけではなく、肌を合わせた女性たちもまたセックスで遊んでいると知るのにそう時間はかからなかった。寝室では愛をささやく女達の、誰誰のペニスがどう趣向がどうだのと下品に口をあけて笑いあう姿を楽屋で見かけてからは、全てが萎えた。
愛が無いのは構わない、それでも多くの男女ほどセックスを楽しんだり利用できないと自覚してからは、すべてが虚しく思える。
バレエの主題は愛だと言いながら、一番遠い存在である自分が舞台の中心で舞うことに皮肉を覚えながらも、小さい頃から培ってきた技量が持て囃されるままに
淡々と時間が過ぎていった。

 

イルカさんが連れて来てくれたカフェでは、綺麗なカップに淹れられたコーヒーを飲んだ。イギリス時代を訥々と話しながらミルクを混ぜるブラックコーヒーは黒い渦を作っていて、あのころはこんな風に真っ黒だったと思いながら、ふぅと息を吐いた。
ふと顔を上げるとイルカさんの真っ黒な目が2つ。

黒い睫毛に縁どられた目の中、白の間に大きく艶めく黒目はコーヒーと同じ黒色なのに全く違う感じがする。目が合うと顔を赤くして視線をそらされてしまったけれど、あの目がもう一度自分に向けられないだろうか。

一度と言わず長く見続けてくれないだろうか。
「イルカさん」

半分残っていたコーヒーを一気に飲み終えて声をかけた。
「そのカップ」
「え?」
「キレイだけど真っ白でしょ?でも中を見てください」
「あ」
「うん、飲み終えると中に模様が出てくるんです。銀色でキラキラしてて光に反射して青くなったり赤く光ったりするんです。カカシさんみたいだと思った。」
どうして心臓の真ん中を剣でえぐられたような気分になるんだろう。無意識に壊れそうになる涙腺に戸惑うんだけど、本当にこの人は分からない。

 

**************************


イルカさんの大学生活が始まると同時にカカシが担当する小等部のバレエレッスンも始まった。体操のクラスも一緒に柔軟などを指導しているが、バレエに関しては100%女の子だ。「えぇー!!ガイジン?!オトコの先生やだー!!背でっかいしー!!こーわーいー!!変質者かもしれないじゃーん!!やっば!!それキモイよー!!」と言いたい放題だった少女たちも、紅から「有名な海外バレエ団のトップダンサーだった」美形と聞きつけた母親ともども懐柔されていた。

「変態」呼ばわりしたというのに、レッスン中にカカシが手本として見せた足さばきに納得したのか今では「先生先生」とうるさいものだ。ませた少女たちの騒がしさに囲まれて少々辟易とする時もあるが、純粋な明るさは思いのほか心地の良いものだった。
毎日ではないが学園内を訪れるカカシは、バレエのレッスンの後も変わらずあの体育館にやってきた。イルカが先に剣道の稽古をしている時もあればカカシが先にバレエを舞っている時もある。小一時間を過ごして、夕焼けに染まる道を歩きながらイルカと一緒に夕食を考える時間が好きだ。
先日はオオトヤというレストラン?に入って魚を食べた。肉よりも淡白な魚が好きだけど、骨の剥がれやすく食べやすい魚を選んでくれたりとイルカさんの気遣いは本当に優しい。

「カカシさん、お腹すいてますか?」
「凄くじゃないけど。うん、すいてるかな」
「俺、今日スーパー行くんですけど家で食べます?」
「え?」
「あ?やっぱり男の料理とか嫌ですよね、はは、ごめんなさ」
「行く、行きたい」
「っあ、はは…良かったー、断られるかと思った」

隣で歩くイルカさんが鼻の傷を掻きながら「はは」と小さく笑うのを見て、抱き着きたくなった。おかしい、こんな気分になるなんて自分はどこかおかしいんじゃないかと思って呆然としている間に、イルカさんは一歩先を足早に歩いてる。
夕焼けか何だかよく分からないけど耳を赤くしながら「早く行きますよ!夕方セールが終わっちゃう!舞茸買いたいんです!」とまくし立てる姿を見て、やっぱり可愛いと思った。

 

 

続く

 

**************************
足取り激重だったけど、ちょっとラブになってきたー(*´ω`*)
ラブ?そうか?うん…まぁね…やっと!やっとここまで(笑)!!
仲良くなる過程が難しくて、カフェのサンドをやたら細かく説明とかどうでもいいことに労力を…。
仙人シリーズもそうだけど、大学生ものには一応モデルの学校があります。
女子大だったので母校じゃないんだけど、他校の資料室でバイトさせてもらった時にお世話になった学園で、街の雰囲気とか学園内の自然とか凄い好きでした。
大学は普通の共学なんだけど中高は超名門の男子校で、学園内を歩く少年たちのスーパー頭良さそうな顔に内心キャーキャーでしたな。
カフェもその大学から駅までの道にあって、カップを選べるのが素敵な喫茶店。エビサンドは実際のカフェメニューではなくて私の好きな組み合わせ♥
菜っ葉呼ばわりしましたがベビーレタスとクリームチーズ+エビ(サーモンでも可)とか女子的に最強だぜ!がっつり肉のBLTも好きです。
学園の近くには昔ながらの美味しいお蕎麦屋さんや和菓子屋さんとかあって素敵な街でした。バイト帰りに池袋の乙女ロードでウへウへ遊んだ思い出とかしょっぱく蘇ったじょ。